介護はビジネスか?

 2011年の改正前の介護保険制度の状況を踏まえて、介護をビジネスとして自分の中で整理して考えてみた「介護ビジネス覚書」を「介護はビジネスか?」と改題して全文を掲載いたします。
 昨年2011年7月にネット上に掲載したもので、内容の修正やそれ以降の改正を踏まえた第二弾も予定しております。

1章

キャリアパスについて

 介護保険制度のサービスに従事している介護職等の低賃金による離職を抑制するために、期間を限定して、現場の介護職員(ケアマネや事務職員等は非該当)一人当たりについて、ひと月1万5千円を上限とした「処遇改善交付金」の交付を開始していますが、運営法人側の交付金支給に要する申請のプロセスが複雑で、交付金の算出計算がサービス事業によって違ったりすることで、事務作業が多大なことを理由に、申請を見送る法人もあるようです。また更に処遇改善交付金の支給と合わせて、運営法人へのキャリアパス要件の提示も義務付けられました。

このキャリアパス要件は、能力や経験、資格に応じて、評価、処遇等の取り組みを、組織として行っているか提出書類にて行政の確認を要すもので、要件をクリアしていない法人については介護職員の賃金改善のための資金(処遇改善交付金)の支給は受けられないというものです。

処遇改善交付金の算出方法は、サービス事業によって決められた交付率を、サービス事業で支給される給付費にかけた数字を超えた金額で、賃金の増額分として職員に支給しなければならない制度になっています。その賃金の増額分のうちで上限1万5千円分については、行政から処遇改善交付金として法人に処遇改善交付金として交付がされるという仕組みです。算出業務はすべて運営法人側で行わないといけません。

職員からすれば、処遇改善交付金の申請を法人が行ってくれないことは許されない事でしょうし、法人にとってはさらなる離職の原因ともなりかねません。といって、限られた職員体制の中で申請に要す業務を誰にさせるかについての苦労は、現場の職員の理解を得られにくいという事情もあると思いますので、運営法人としては申請プロセスをより簡単にしてほしいというのが本音かと思います。

処遇改善交付金の支給についてはほとんどの人が賛成しているのに、どうして、より単純な規定で職員一人当たりについて一律1万5千円の支給をしないのでしょうか。

その方が法人も職員も喜びますし、介護職員の離職での人材不足の改善を図ることが目的なのですから、支給申請を複雑して交付金を受けにくい仕組みにして、期間を限定するという理由はどこにあるのでしょうか。

当然、職員一人について1万5千円の支給をするのですから、かなりの公費が必要となりますので、不正に交付金を受けようとすることを防止したいと言うことは理解できます。

しかし、処遇改善交付金の支給については、介護保険制度が始まって以降、介護保険事業への参入は、規定をクリアすれば民間企業や個人でも行うことが可能になったことで、介護保険サービスを提供していく法人の体質を、介護保険制度が開始される前の措置制度の体質から、税金の控除や補助金等を必要としなくても、介護保険サービスを提供していくことが可能な「自立した体質」へ誘導して、「特別養護老人ホーム」の運営許可や税金控除の優遇を得ている「社会福祉法人」的な体質から、「民間」的な体質に移行させて、介護給付費等の財源の負担を縮小させる「ふるいかけ」の役割を、この期間を限定した「処遇改善交付金」「キャリアパス」に持たせようとしているとも考えることが出来ます。

そのことは、介護保険サービスにより支給された給付費に対して交付率をかけた額で「処遇改善交付金」を支給する仕組みや、「特別養護老人ホーム」や「社会福祉法人」の優遇されていた部分が徐々に削減、廃止の方向に向かっており、「特別養護老人ホーム」の運営について「社会福祉法人」以外への許可していく方向に制度改正が進んでいることからも推察することが出来ます。

多くの介護保険サービスを提供していく意欲や力のある法人には、処遇改善交付金が多く支給されることでの人材確保が進み、また、今後の介護保険サービスの方向性としての「地域包括ケア」を担っていける人材等の展開が可能な法人については「特別養護老人ホーム」の運営許可を与えて、地域の社会資源としての介護保険サービスを担う拠点としていくという社会資源の受け皿の再編が進んでいくのではないでしょうか。


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2章

人材確保について

介護保険制度が始まり、公的なサービスとしての介護保険サービスへの民間の参入が始まったことで、時折ニュースになるような問題を抱えながらも、民間企業や個人による様々な新規参入や事業の拡大が行なわれています。

特に全国的にデイサービスやヘルパー事業、有料老人ホーム、高齢者専用賃貸住宅を行っている民間企業の事業展開は着実に進んでおり、今後もさらに事業の拡大と収益の増収を事業計画しているようです。

では、ニュース等で人材不足が叫ばれている中で、事業の拡大を計画しているこのような民間企業でも、現在のような就職難と言われているにもかかわらず、人材確保ができないことが原因で事業拡大に支障が出始めているのでしょうか。

おそらく、福祉系の専門学校もある状況で、介護保険サービス事業を着実に拡大し続けている民間企業は、確実に人材の確保も行えているだろうと思っています。

なぜなら、それら民間企業には、今まで他事業で培った人材確保についてのノウハウがあり、介護保険サービス事業に対しても、その自分たちのノウハウで対応しているであろうことは想像に難くないからです。

最も基本的な準備としての人材確保が原因で事業拡大が行えないというような甘い計画を立てること自体、そもそもありえない話であって、責任問題となることは容易に想像できる話です。

定期的に介護職員向けの求人説明会も開催されていますし、就職難のなか福祉関係の学校の新規卒業者の就職先としての受け皿に、事業を拡大して、収益を増やしている企業がならないわけがありません。

おそらく、介護職員向けの求人説明会においても、一般企業の求人説明会同様に、ブースによって採用希望者数に差があるのではないかと思います。

では、慢性的に人材不足に悩まされている法人は、なぜそのようなことになっているのでしょうか。

人材確保がうまくいっていない法人については、職員の離職率も高いという問題もリンクして起こっているのではないかと思います。

新入社員を雇っても、すぐ辞めてしまい、人が安定して働けない状況が、現場や組織全体に慢性的にあって、それを認識して解決することが出来ないでいることが予想されます。

人件費、人材育成、職場の人間関係、評価等の、民間企業では当たり前に対応している基本的な組織体系が構築されていないことが原因となっていると思いますが、最近介護保険に導入された「キャリアパス」はそのような人材不足の原因や問題を運営法人が抱えていないか浮き彫りにする役目があります。

新たな人材を抱えることも困難な中で、組織を効率的にして事業を行っていくには、人材確保が生命線になるという認識を、運営法人と担当者がどこまでシビアに持っているかで結果に大きな差が出ていると思います。

特に介護保険制度が始まって以降も、措置制度の気分で「特別養護老人ホーム」の運営に特化できていたことや税控除で介護保険制度の中で優遇されていて安穏に考えていた社会福祉法人については、「独立採算」と「人材確保」の難しさがようやく解りかけてきていると思います。

厚生労働省が介護保険の始まる前からレクチャーをしていたにもかかわらずに、真意が読めないまま意識改革や体質改善が行えずに、制度変更の度に右往左往している社会福祉法人もあるのではないかと思います。

2012年の介護保険制度の改正は、次の改正に向けての方向性をはっきり示しており、事業の規模や種類にかかわらず、その意味を受け止めることが大事ではないかと思います。

提供できるサービスが限られていても、そのサービスに対して特化できれば、民間同様に利用者からの支持を得ることができ、「利用者」にとってなくてはならない社会資源としてサービスを提供し続けることが出来るというのは、事業運営として普遍的なことではないかと思います。



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3章

人材育成について


介護サービス事業において、そこで提供されるサービスの質を左右する人材を育成する運営法人の取り組みの差が、サービスの質に顕著に表れるのは当然のことですが、人材育成について、現場や個々の職員判断での研修に任せているような運営法人は、もっと積極的に外部研修を含めて、職員の教育に体系的に取り組むシステムを持つべきだと思います。

介護サービスを提供することの責任や運営法人の理念に沿って、どのような職員を必要としているのか、また、どのようなサービスを利用者に提供していくのかを明確にして、職員一人一人に研修を通じて理解、実践させていくことが大事で、運営法人は、人材育成について曖昧に考えるのではなく、責任を持って取り組み、サービスの「質」を維持していくことが求められる時代になってきています。

ペナルティのない、行政の「情報の公表」や「第三者評価」をクリアするレベルではなくて、外部研修等を含めた、計画的な教育に運営法人が積極的に取り組み、人材育成を徹底的に行っていくことが、サービスの向上にもなり、運営法人のサービスとしての「売り」となって、利用者の支持を得て事業拡大につながる最も効率的な戦略ではないかと思います。

まず大事なのは、各部所のリーダーとなっている人材の育成を行う必要があります。特に、介護保険以前から介護を仕事としているような、いわゆるベテラン職については、介護保険制度の「独立採算」となって、サービスを提供する「サービス事業」と言う認識への、意識改革が行われているか確認する必要があります。

例えば、技術的には優れていても、「サービス」として基本的な「口のきき方」等の応対ができているか、また「公的サービス」としての法令順守が理解できているか等を確認する必要があります。

長年介護を行っていることで、介護される側は社会的な弱者だと思って、介護する側が逆手にとった態度をとっていないか等の、「サービス」としての「ホスピタリティ」についても認識させる必要があります。

場合によってベテラン職員に対して、その人の人格にも触れるような指導を行うことは、法人内の人材だけでは、なかなか難しい面があると思いますので、外部研修を取り入れ、平等に研修を受けさせることをお勧めします。

また、私がもう一つ職員の一人ひとりに指導として認識させる必要があると思うことは、介護保険制度の社会的な意味合いへの理解についてです。

介護福祉士等の資格試験の対象として、介護保険制度についての設問もあるのですが、法令順守とは違う意味で、社会的な意味や人間への理解を深めたうえで、介護保険制度の仕組みや役割を認識しながら介護保険サービスに従事できるような、人格形成を含めた指導を行う必要があると思っています。

運営法人がそこまで行う必要性があるのかについては異論もあるでしょうが、本質的には社会や人間性への理解を深めることが、利用者とのコミュニケーションやサービスの向上につながり、利用者や保険者からの信頼を得て、さらなる事業拡大につながる大きな要因になると思っています。



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4章

資金確保について


 介護保険事業を行っていくことについての人材確保と育成については、資金確保の裏打ちがあって初めて意味のあることになります。

ただ、職員の離職が多くて運営規定に抵触することで事業所閉鎖を避けるために、人材確保を繰り返すのではなくて、将来的な事業計画があり、その実現に向けた資金確保が前提にある人材確保と育成でないと、今後の介護保険事業サービスを社会資源として地域に提供し続けていくことは難しくなります。

民間企業で介護保険事業に参入している場合は、将来的な事業計画と返済計画のうえで、融資を受ける等の資金確保を行い、収益を上げて事業拡大を続けていますが、個人や小規模、中規模の法人については、社会や介護保険制度の動向を見極めることが出来ずに、明確な事業計画や資金確保が難しい場合があるのではないでしょうか。

特に介護保険制度の改正が数年毎に行われて、給付費削減等が行われると、収支計画を修正しなければなりませんが、運営法人内に包括的に社会や介護保険制度の動向を見極めて、判断を行えるシステムがないと、介護保険制度の改正の度に右往左往して体力だけが消耗していく図式になります。

特に介護保険制度が始まる以前から介護を提供してきた法人については、それまでどちらかと言うと閉鎖的な環境にいたために、介護保険制度が始まって以降、利用者が多様化したことで、介護を通じて「社会」と向き合わなくてはならなくなったのですが、変革についていけずに民間的なグローバルな視点や、発想の転換ができないまま、措置制度時代の内部留保を目減りさせながら、自問自答を続けているか、殻に閉じこもって事業の縮小を検討しているような場合もあるのではないでしょうか。

資金確保には、事業拡大を行い、介護サービスを地域社会に提供していくという前向きな姿勢と責任が伴ったものでなくてはなりませんし、そのための資産の運用等についての知識も必要とされる時代になっていますが、介護保険制度が始まるまで「介護」と言う、ある意味閉ざされた環境で純粋培養された「草食系」の法人は、今後の厳しい環境に適応していくことに苦労するかもしれません。
そういう意味では、厳しい環境でサービス業や人材教育、社会インフラを担ってきた民間企業や前向きな姿勢をもった法人が、社会資源としての介護保険事業に参入して、明確な事業計画に裏付けされた融資等による資金確保を行い、業績を上げ続けていることは当然の結果であると思えますし、そのことが利用者が安心して「サービス」としての「介護」を受けることにもつながっていくと思います。



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5章

現在までの介護保険制度の経過と、今後の動向について


 介護保険制度が始まって10年が経ちましたが、制度維持のために定期的な制度改正を行っています。

現在までの主な制度改正については、「要支援1・2の介護度創設」「在宅介護支援センターの業務を、地域包括支援センターと居宅介護支援事業所に分割」「介護ベット・車椅子レンタルについての原則要介護2以上への制限」「同居家族がいる場合はヘルパーによる家事援助の原則不可」「小規模多機能型居宅事業の創設」「高齢者専用賃貸住宅等の創設」等、大きな方向性としては「地域のネットワーク作り」「要介護状態への予防」「軽度者へのサービス利用の制限」「認知症への包括的な支援」「高齢者住居への支援」が挙げられると思います。

「要支援1・2の介護度創設」については、それまでは「要支援」だけだった認定を1と2に分けることで、利用制限を設ける等で、軽度者への介護保険給付費用の削減を図ることになりました。

また、そのことを推し進めるために、要支援のサービス調整や相談業務を担当する「地域包括支援センター」を創設して、「地域のネットワーク作り」「健康管理」「要介護状態への予防」の役割を担わせて、「要介護」状態にならないような地域での取り組みを推進することにもなりました。

同時に、「介護ベット」「車椅子」のレンタルや「ヘルパーによる家事援助」のサービス利用についての制限を設けて、慢性的な給付費用の削減を図っています。

そして、「認知症」高齢者に対しては、地域密着事業として「小規模多機能型居宅事業」を創設することや、「地域包括支援センター」を中心に地域住民への「地域のネットワーク作り」と並行した「認知症サポートリーダー研修」を催して地域への高齢者や認知症への理解と協力体制を推し進めています。

「高齢者専用賃貸住宅」等の推進は、慢性的な高齢者の入所施設の不足を解消することについて、行政は今後「箱もの」と言われる大きな財源が必要となる「特別養護老人ホーム」のような施設は建設しない方針ですので、補助金を支給することで、高齢者住宅問題に民間企業を参入させて問題をある程度解消したいということです。

ここまでの経過をみて、現在まで介護保険制度の改正の方向性をさらに噛み下して言うと、「地域ネットワークの推進による地域住民を中心とした、見守りや介護予防、認知症に対する協力体制を作り、また、軽度者の介護サービス利用を制限していくことと同時に、もっとも財源が必要な高齢者住宅を民間企業に担えるようにすることで、地域のマンパワーと民間活力による、地域密着型の介護体制を推し進める」と言う図式が浮かび上がってきます。

行政は何をするかと言いますと、当然それらの方向性がスムーズに進むような、補助や介護保険制度の改正、施策の創設と、運営の監督を行っていくことになります。

そして、今後の介護保険制度の改正の方向性としては、「軽度者のサービス利用のさらなる制限」「ケアマネージャーのケアプラン作成委託の有料化(現在は全額保険支給され無料)」「高齢者住宅のさらなる民間参入促進による地域包括ケアの推進」が挙げられると思います。

「軽度者のサービス利用のさらなる制限」については、以前から「要支援1・2」についての介護保険サービスの打ち切りが議論されていますし、「ケアマネージャーのケアプラン作成委託の有料化」も同じく議論に挙がっていますが、反対意見が多く、改正には至っていません。2015年度の改正には制度化される可能性は高いと思っています。

そして、「高齢者住宅のさらなる民間参入促進による地域包括ケアの推進」については、サービス提供を行うことと組み合わせて認可していく改正が進んでいますし、体調管理や見守りを訪問看護やヘルパーにより行えるような、「24時間型の地域包括ケア」を体制化していく方向性で議論が進んでいます。

いわゆる高齢者住宅建設を、ある程度のサービス提供を条件に民間に委託して、地域の社会福祉法人や力のある民間企業に、24時間の体調管理や見守りサービスの体制を提供させることで、高齢者がいつまでも地域で生活できるような体制作りを行うことで、「特別養護老人ホーム」「老人保健施設」へ入所できずに困っている入所待機者の問題を解消させるという方向性で進めています。

「軽度者のサービス利用のさらなる制限」「ケアマネージャーのケアプラン作成委託の有料化」については、利用者に負担を強いる改正になると思われますが、「高齢者住宅のさらなる民間参入促進による地域包括ケアの推進」については、高齢者の地域での暮らしを促進しようとする試みです。すでに、新潟において先進的な「24時間の地域包括ケア」を実践している社会福祉法人もあるようです。
しかし、方向性としては理解できますが、増税による財源確保は確実でしょうし、地域での社会資源の格差で受け皿がなく、制度だけが独り歩きするようなことがないよう、行政の対応が進められることが最も期待されることです。



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6章

介護保険事業で何を注意するのか


 介護保険事業に参入する際に注意することと、介護保険事業の運営を行っていく上で注意することについて分けて考える必要があります。

ここでは、介護保険サービス事業のどの分野に参入するかについて取り上げます。

最も費用が掛からないのは、ケアマネージャー(介護支援専門員)一人で始めることができる「居宅介護支援事業所」を運営することです。

しかし、収支から考えると、一人のケアマネージャーが担当可能な利用者数の制限等を考えると、勤務しているケアマネージャーの給与を支払うと利益がでないどころか、慢性的な赤字になることが予想されます。

「居宅介護支援事業所」を赤字にすることなく運営するには、担当件数を平均以上に受け持つことが可能なケアマネージャーを、複数確保して力技で収入を確保するか、「特定事業所加算」を取得して1件当たりの給付単位を上げる方法があります。

「特定事業所加算」には「Ⅰ」(一人につき500単位加算)と「Ⅱ」(一人につき300単位加算)があり、「Ⅱ」の場合は、ケアマネージャーとして現場で5年以上勤務後に任意の研修を受けることで取得できる「主任介護支援専門員」資格を取得した常勤ケアマネージャー1名以外に常勤のケアマネージャー2名の計3名の人員で始めることが出来ますが、24時間の相談可能な連絡体制や、減算を出せない等の規定があります。

更に「特例事業所加算Ⅰ」を取得する場合は、「主任介護支援専門員」以外に3名の常勤ケアマネージャーと、「Ⅱ」の規定以外に、受け持つ利用者の半分以上が「要介護3」以上でないといけない等の規定が厳しくなります。

次に資金と人材の負担が少ない介護保険事業は、「居宅介護支援事業所」と「訪問介護(ヘルパー)」事業を併設して行うことです。

「訪問介護」事業は、ヘルパー2級以上の資格所持者3名以上で始めることが可能です。そのうち1名に「サービス提供責任者」を兼務させることが必要で、ヘルパーを増やす際には、非常勤ヘルパーとして雇い、勤務量に比例して雇用していけば、余分な人件費で運営を圧迫することがありません。

「居宅介護支援事業所」と「訪問介護(ヘルパー)」事業を併設して行うことのメリットは、利用者のサービス事業所の調整を行う「居宅介護支援事業所」のケアマネージャーから、同法人運営の「訪問介護(ヘルパー)」へ利用者を紹介して、「訪問介護(ヘルパー)」事業の収入を見込むことができることです。

その場合に注意することは、「居宅介護支援事業所」と「訪問介護(ヘルパー)」事業双方の紹介割合が減算規定を超えないようにしなければなりません。

「居宅介護支援事業所」については、同法人の「訪問介護(ヘルパー)」事業への紹介率が9割を超えないようにしなければ減算となり、支給された介護保険給付費の一部を変換しなければなりません。

「居宅介護支援事業所」の「特定事業所加算」については、余裕があれば取得すればよいでしょうが、まず「居宅介護支援事業所」と「訪問介護(ヘルパー)」事業での安定した運営を確立していくことが大事です。

別に「居宅介護支援事業所」と「訪問介護(ヘルパー)」事業を併設で行う必要はなく、「訪問介護」事業のみを行うことも可能ですし、「訪問看護」(民間法人で運営可能)や「訪問入浴」等の訪問系のサービスを単独で開始することや、組み合わせて行うことも可能です。

次に「デイサービス」「デイケア」についても参入しやすい事業として紹介しておきます。

まず、デイサービス事業を行う場所や必要な人員、面積、設備(浴室等)、食事の提供を準備する必要があり、食事については、デイサービス内で調理して提供するか、外部の業者から取り寄せるか等の検討が必要になります。

また、利用定員に比例して必要な人員や面積が規定されていますし、送迎に必要な車をレンタルすることや、常勤の看護師等の準備が必要で、「デイケア」については「理学療法士」等のリハビリ職員の配置も必要ですから、「訪問介護」事業に比べて、準備や運営は複雑になります。

その他のサービス事業としては、「訪問リハビリ」事業がありますが、医療法人にしかサービス提供できないことになっています。

また「特別養護老人ホーム」や「老人保健施設」についても「社会福祉法人」や「医療法人」等の、運営が許可されている法人に制限があります。

ただ、今後の介護保険の方向性としては、「特別養護老人ホーム」や「老人保健施設」のような施設だけではなくて、民間による「高齢者専用賃貸住宅」等の高齢者住宅の建設を進めて、「訪問介護」や「訪問看護」による「24時間の地域密着の包括ケア」等を組み合わせて提供できるようにしていくことで、入所できずに待機者となっている高齢者の受け皿にしようと考えていますので、今後、介護保険事業に参入する場合には、今までの「施設」と「在宅」を分けて考える仕組みと並行して、「高齢者専用賃貸住宅」等を拠点とした「地域包括的なケア」を推進して、施設の機能を「地域に移植」していく方向性であると言うことを前提にして、検討していく必要があると思います。



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7章

介護サービスの利用者について


 介護保険サービスを利用する利用者や家族がどのような人たちであるかについては、まず言えることは、私たちと同じように日常生活を営んでいる人たちであると言うこと、介護が必要になったことで「不安になって戸惑っている」状態にあると言うことです。

本人や家族はたいてい、介護が必要になるまで「介護」について真剣に考えたことがない場合が多いと思いますし、本人に至っては状況の認識や、状態を受け入れるまでに時間がかかる場合も多いと思います。

おそらく家族も介護についての知識はないでしょうし、どのように介護してよいか分からず、「ヘルパー」や「デイサービス」は聞いたことはあるが、介護保険サービスの利用手続きの方法も分からないのではないでしょうか。

一番困っているのは、介護を受ける本人で、今まで自分で出来ていたトイレや入浴等を人に関わられるストレスはすごいと思います。

家族がどこまで介護にかかわれるのか、自分の仕事はどうするのか等、家族関係を含めた大きなライフスタイルの変化に対応していかなければならない状況になります。

介護によって、家族の絆が深まることもあるでしょうし、それまで交流のなかった家族に介護が必要になったことで、急遽同居することになった家族や、もともと仲の良くない家族が介護しなければならなくなった等、それまで表だっていなかった家族関係に直面しなければならない場合も多いと思います。

別の次元で、病気や事故で、身体に障害が残ったり、急な物忘れでコミュニケーションがスムーズに行かないことで、誰も悪くないのですが、介護を通じて双方がストレスを抱えて、介護を機に家族の関係が悪くなることもあると思います。

「介護」と言う「サービス」を提供する「労働」を行うことについては、様々な要素が含まれています。

「介護サービス」は、具体的にサービス内容が決まっており、その「サービス内容」について、個別に給付費も決まっていますが、介護者の「気持ち」に対して「労働」としての評価は、介護保険制度にはありません。

人の気持ちは推し量ることが難しく、伝わらないこともしばしばです。

介護保険サービスを利用する人、提供する人との間で、交わされている「人の気持ち」については、私たちの普段の日常生活以上に深く、温かい場合や、気が合わずに、とげとげしい「気持ち」のなかで「介護サービス」だけでつながっている場合もあるでしょう。

ただ、介護サービスの利用を必要としている利用者や家族は、かなり大変な状況を抱えて、人の「気持ち」を必要としている場合が少なくありません。

全てをサービス提供者に話してはくれませんし、伝え方がうまくない人もいて、周りから誤解されている場合もあるでしょう。
そんな中で気持ちを通い合わせて「介護」を「ケア」として提供していくことについては、なかなか簡単ではなく、トラブルになってしまうことも多いと思いますので、介護サービス事業を行うに当たっては、「気持ち」について考えてみることも必要ではないかと思います。



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8章

利用者に制度やサービスを通じて何を提供すべきか


 介護サービスでは、当然「介助」「家事」等のサービスを提供していくのですが、介護保険制度で受けることが出来るサービスについて、提供する側は「どのようなサービス」を「どの範囲」で提供することが出来るか理解できていることに比べて、介護が必要になった原因となる病気や麻痺の状態が今後どのように推移していくのか、その間の本人や家族の生活全般がどうなるのか不安な中で、初めて介護保険サービスを利用する側にしてみれば、介護保険サービスで「どのようなサービス」を「どの範囲」で受けることが出来るかについて理解できていない状況にあります。

制度上はケアマネージャー等が介護保険制度や地域で受けることが可能な保険外のサービスの説明を行うことになっていますが、介護保険の制度や介護保険で提供されているすべてのサービスの説明、また介護保険以外で受けることが可能な保険外のサービス等について、一度で利用者に説明することは現実的には困難で、基本的な説明と、その利用者の状況から必要と思われる部分について、的を絞って説明していくのが現状です。

また、一度説明を受けたからと言って、すべてを理解して、その中で自分に必要なサービスを抽出することもなかなか難しいでしょうし、ケアマネージャーの提案からサービスを選択していくというのが現状です。

はじめから具体的なサービスを希望して、サービスを受け始めることで、状況が安定すればよいのですが、利用者の意向で、自宅に来てもらうことや、人なかで過ごすことが苦手で、サービスとうまく結びつかない場合もあります。

「介護サービス」とはいえ、今までかかわりのない他人に、排泄や入浴等の日常生活に介入されることは、大きなストレスですし、長時間を知らない人なかで過ごすことを好まない人がいるのは容易に想像できます。

そのような中で、「今後の見通し」に不安を感じて「安心」出来ないでいる人も多いのではないでしょうか。
今後、介護保険制度は「地域包括ケア」を推進していく方向で制度改正が進んでいます。「24時間体制」「地域密着」をキーワードに、施設に入所することなく、地域でいつまでも過ごすことが出来るというのは大変すばらしいことかもしれませんが、今まで介護保険サービスにうまく結びつかなった人についても、「今後の見通し」に不安を感じないで、「安心」できる制度やサービスになることも課題だと思います。



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9章

見守りとリハビリ、交流場所の確保


 介護保険で提供されているサービスで「見守り」についてサービスを受けるには、デイサービスやショートステイ等の外出サービスを利用しなければなりません。

ヘルパーは見守りサービスはできないことになっていますし、ヘルパーの家事援助は最長1時間30分まで、2時間以上の間を空けないと同日に家事ヘルパーは利用できません。

また、1日数回ヘルパーを利用する計画を立てることは、利用者の利用料の負担の面でも限られた利用者にしか難しいのではないでしょうか。

単価は安くても長時間、自宅で見守りや安否確認をしてくれるサービスや、ひと月定額で1日数回、もしくは2日に数回、または緊急時に自宅を訪問してくれるサービスが気軽に利用出来れば、かえって介護給費を削減することにつながるのではないかと考えています。

例えば、現在のテレビ電話や遠隔操作での画像配信等のit技術が進んでいますので、遠方の家族からの依頼で、気軽に見守りや安否確認をしてくれるサービスがあれば、ニーズはあると思います。

なぜそのようなことを提案するのか言いますと、利用者の多くは基本的に自宅に居たいと思っているのではないかと思うからです。

当然閉じこもりは避ける必要がありますので、病院やリハビリ、交流場所へは同伴で付添えることも、定額の見守りサービスの一環として定額で提供できればよいのではないでしょうか。

また、自宅以外での入浴やリハビリ、社会的な交流もデイサービス等の外出サービスだけではなく、入浴やリハビリ、社会的な交流のみ提供する通所のサービスを組み合わせれば、効率的にサービスを提供できて、利用者も柔軟にサービスを受け入れることが出来ると思います。デイサービスの入浴設備や、デイケアのリハビリ施設等の空いた時間に、付添いサービス等のスタッフでサービスを提供できるようにすればどうでしょうか。
小規模多機能型居宅事業と連携したサービス拠点を設置して、地域のデイサービス等とも連携して、さらに柔軟に幅広いサービスを提供できるようにしていくことから検討してはどうでしょうか。お泊りデイサービスとの差別化もできますし、「高齢者賃貸住宅」等と組み合わせた「地域包括ケア」との相性も良いと思います。


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10章

仕事の創出


 お元気な高齢者が多い事がマスコミ等に採りあげられていますが、今まで充分に働いてきたのだから、ゆっくり休みたいと思っている高齢者もいるでしょうし、何かしたいけれども、定年になってしまい、年齢的にどこも雇ってくれないので、仕方がなく自宅に居ることが多い等、高齢者のニーズについては、ビジネスマーケティングの対象とした書籍も多く、今後の動向が注目されています。

高齢者の動向が注目されていることは素晴らしい事ですし、もっと発言して介護保険制度が良くなるよう提案をされることも、今後の介護保険制度に重要な影響を与える力となるはずです。

おそらく高齢者と呼ばれること自体を拒絶する人もいるでしょうから、いつからが「高齢者」なのかも、年齢だけで決められない時代になってきているかもしれません。

いっその事、自己申請で社会制度上「高齢者」となるかどうかを自分で決められるようにすればどうでしょう。

基本的には、年齢で社会制度上は「高齢者」となりますが、本人がまだお元気で今まで通りの社会的な活動を継続したい場合は、規定を設けて自己申請で「社会制度上」の「高齢者」の扱いがされない代わりに、就職等について優遇して社会的な場で活躍してもらうというのはどうでしょう。

元気な人から年齢だけを理由に社会的な役割を取り上げて、非活動的な環境にしておきながら、高齢者への閉じこもり防止や心身機能維持の施策を、わざわざ税金を使ってするのであれば、本人の意向で社会で活躍してもらえるような施策にした方が、現状に即しているように思えます。

現在、高齢者を新しく雇用することに対しての助成金等の制度はありますが、もっと本人がやりたいと思っていることをサポートするような公的な事業はできないものでしょうか。

例えば、団塊の世代の高年齢化が進みますが、世代的にit環境に慣れている方も多いと思いますので、it技術を通じた仕事に携われるような教育を行政主導で行っていくこと等はどうでしょうか。

会社へ出勤する必要はなく、ネット環境が整っていますので、仕事によっては自宅のコンピューターで仕事をしてもらえる時代になってきていますし、能率給で報酬を支払えばよいと思います。

総務や人事の仕事を、it環境が整ったおかげで海外に移転するのであれば、日本の優秀な高齢者をクライド技術でネット上で組織化して、新しい仕事を創出するような取り組みはできないでしょうか。

ひょっとしたら、世界的なベンチャー企業が日本の高年齢者たちから起こるかもしれません。

「高年齢者」には、まだまだ力があると思います。現在を含めて、今後の世界にも大きな貢献を力を持っていると私は思っています。



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